この記事を書いた人

「日本泌尿器科学会泌尿器科 専門医」の資格を持ち、医師として約8年医療現場に立つ。
特に感染症、排尿障害、尿路結石、がん診療を得意としている。
2026年6月に我孫子でクリニックを開業予定。
陰嚢水腫とはどんな病気?
陰嚢水腫(いんのうすいしゅ)とは、精巣(睾丸)の周囲に「液体(漿液)」がたまって陰嚢が腫れる状態のことをいいます。陰嚢の中には精巣と、それを包む「鞘膜(しょうまく)」という膜があります。この膜の間に液体がたまると、陰嚢全体がふくらんで見えるようになります。
大人だけでなく、新生児や子供にもよく見られる病気で、多くは痛みがありません。ただし、急に腫れが大きくなったり、痛みや熱を伴う場合は、別の病気(精巣炎・精巣捻転など)の可能性があるため注意が必要です。
小児における陰嚢水腫
子供の陰嚢水腫は非常に多く、特に新生児期や乳児期に見られます。これは、赤ちゃんが母体の中で成長する過程で、腹膜(お腹の膜)と陰嚢をつなぐ通り道が閉じきらないことが原因です。
生後しばらくはその通り道を通じて腹部の液体が陰嚢に流れ込み、腫れて見えることがあります。このタイプを「交通性陰嚢水腫」と呼び、成長に伴って自然に閉じて治るケースが多いです。
多くは1〜2歳までに自然治癒しますが、大きくなる場合や左右差が強い場合は手術が検討されます。
成人における陰嚢水腫
原因が不明なことがも多いですが、炎症や外傷、腫瘍などが原因で鞘膜腔内に液体が過剰に分泌されることが主な原因です。この場合、陰嚢水腫は「非交通性陰嚢水腫」と呼ばれます。
陰嚢水腫の症状はどんなもの?
主な症状は、陰嚢の腫れです。痛みや発赤がないのが特徴ですが、見た目の変化で気づくことが多いです。
- 陰嚢の片側がふくらむ
- 痛みや熱がなく、触るとぷよぷよしている
- 横になると腫れが小さくなることがある(交通性の場合)
光を当てると透けて見える(透光性)ことがあり、これが陰嚢水腫の特徴です。急に腫れが大きくなったり、硬く痛みを伴う場合は、腫瘍、精巣捻転や感染症などの緊急疾患を疑います。
陰嚢水腫と似た症状を呈する病期として以下が含まれます。
- 精索静脈瘤:精巣の血管が発達して、陰嚢が腫れてみえることがあります。
- 精巣腫瘍:無痛性の腫瘤を触知し、透光性は認められません。
- 陰嚢ヘルニア:腸管が陰嚢内に脱出し、体勢により腫脹が変化します。
- 精巣上体炎:痛みを伴う腫れが特徴で、発熱や排尿時痛を伴うことがあります。
陰嚢水腫の検査
超音波検査
陰嚢内の液体貯留を確認するための第一選択の検査です。
腫瘍や精索静脈瘤など、他の陰嚢内の疾患との区別にも有用です。
尿検査、血液検査
感染が疑われる場合は、尿検査や血液検査を行います。
腫瘍が疑われる場合は、腫瘍マーカー(AFP、hCG、LDHなど)の測定をすることもあります。
陰嚢水腫の治療
小児の陰嚢水腫
多くの場合、1歳までに自然閉鎖するため、経過観察が推奨されます。
1歳を過ぎても改善しない場合や、症状が進行する場合は、手術(鞘状突起の高位結紮術)が検討されます。
成人の陰嚢水腫
原因が特定される場合は、その治療が優先されます(例:感染症の治療、腫瘍の摘出など)。
それらの原因がない際は、水腫を穿刺して液体を排出することができます。しかし、再発することがあります。
症状が強い場合は、手術(鞘膜切除術など)が行われます。