この記事を書いた人

「日本泌尿器科学会泌尿器科 専門医」の資格を持ち、医師として約8年医療現場に立つ。
特に感染症、排尿障害、尿路結石、がん診療を得意としている。
2026年6月に我孫子でクリニックを開業予定。

腎臓とは?

腎臓は背中(後腹膜腔)に位置し、左右に1つずつ存在します。 成人の腎臓の大きさは、長さ約10~12 cm、幅約5~7 cm、厚さ約3 cm、重さは約120~150 gです。

腎臓の主な役割

老廃物の排泄

腎臓は血液を濾過し、老廃物を尿として排泄します。1日あたり約180 Lの原尿が生成され、そのうち約99%が再吸収され、最終的に1~2 Lの尿が排泄されます。

水・電解質バランスの調整

体内のナトリウム、カリウム、カルシウム、リンなどのミネラル(電解質)濃度や水分量を調整します。 血液のpH(7.35~7.45)を維持します。

血圧の調節

血圧の変動にかかわるホルモン(レニン)を放出し、血圧の調整に関わります。

エリスロポエチン産生

赤血球産生を促進します。

活性型ビタミンD(1,25-ジヒドロキシビタミンD3) 産生

体内のビタミンDを活性化させ、骨を丈夫にします。

腎腫瘍とは?

腎腫瘍は、腎臓に発生する腫瘍性病変の総称であり、良性腫瘍と悪性腫瘍に分類されます。悪性腫瘍の中で最も一般的なのは腎細胞癌(RCC)であり、腎腫瘍全体の約85~90%を占めます。50歳以降の中高年者に多く認められますが、30歳以下の若年者にも発生することがあります。

初期の段階では自覚症状が乏しく、健康診断や人間ドックの超音波(エコー)検査で偶然見つかるケースも少なくありません。
進行例では以下の症状がみられることがあります

  • 血尿(肉眼的または顕微鏡的)
  • 側腹部痛 、腫瘤触知 (しこりを触れる)
  • 発熱、体重減少、倦怠感などの全身症状

腎腫瘍の分類

良性腫瘍

 腎血管筋脂肪腫(AML)

最も一般的な良性腫瘍で、血管、平滑筋、脂肪組織から構成されます。 - 通常は無症状ですが、大型化すると出血や痛みを引き起こすことがあります。 - 結節性硬化症に関連する場合もあります。

腎嚢胞

腎臓に液体が溜まった嚢胞性病変で、単純性嚢胞は良性であることがほとんどです。 - 複雑性嚢胞は悪性腫瘍との鑑別が必要です。

その他の良性腫瘍

腎腺腫、腎傍神経節腫などがあげられます。

 悪性腫瘍

腎細胞癌(RCC)

腎腫瘍の中で最も一般的な悪性腫瘍で、腎実質の尿細管上皮細胞から発生します。 - 主な組織型には、淡明細胞型(約70~80%)、乳頭状型(約10~15%)、嫌色素型(約5%)などがあります。 - リスク因子として、喫煙、肥満、高血圧、慢性腎疾患、遺伝性疾患(例:フォン・ヒッペル・リンドウ病)などが挙げられます。

腎盂尿管癌

腎盂や尿管の移行上皮から発生する腫瘍で、腎腫瘍全体の約5~10%を占めます。 - 喫煙やアリルアミン(塗料やゴムの原料など)曝露がリスク因子です。

ウィルムス腫瘍(腎芽腫)

小児に発生する腎腫瘍で、3歳以下の発症が多いです。 

その他の悪性腫瘍

悪性リンパ腫、腎肉腫、転移性腎腫瘍などがあげられます。

腎腫瘍の検査

画像診断 

超音波検査

体への侵襲なくでき、まず行われる検査になります。腎腫瘍の初期スクリーニングや腫瘍の性状・大きさの 評価に用います。

CT画像検査

腫瘍の性状(固形性、嚢胞性)、大きさ、局所浸潤、リンパ節転移、遠隔転移の評価に最適です。悪性の評価などのために、しばしば造影剤使用が推奨されます。 

MRI検査

CTで評価が困難な場合や造影剤使用が禁忌の場合に有用です。特に腎静脈や下大静脈への腫瘍浸潤の評価に優れている場合があります。

血液検査 

 腎機能(クレアチニン、eGFR)、炎症反応、貧血、高カルシウム血症の有無を評価します。

尿検査

血尿の有無を調べます。腫瘍の細胞が流れ出ており診断につながることもあります。

生検検査

上記検査である程度の診断がつくことがほとんどですが、診断に悩んだ際に針での生検が検討されることがあります。

腎腫瘍の治療

腎腫瘍の治療は、腫瘍の種類(良性か悪性か)、進行度(ステージ)、患者の全身状態や併存疾患などに基づいて決定されます。

良性腫瘍

腎血管筋脂肪腫(AML)

良性腫瘍であり、無症状の場合は経過観察が一般的です。ただし、腫瘍が大きい場合(>4 cm)や出血リスクが高い場合には、外科的切除や血管塞栓術が検討されます。

嚢胞性腫瘍

一般的な単純性腎嚢胞は治療を必要としませんが、複雑性嚢胞(Bosniak分類IIIまたはIV)など悪性の可能性がある場合は、外科的切除が推奨されます。

悪性腫瘍(腎細胞がん)

手術治療

腎細胞癌の標準治療です。腫瘍の大きさや場所によって、腎臓全体を摘出する手術(腎臓全摘術)や腎臓の腫瘍だけをくりぬく手術(腎部分切除術)などが検討されます。部分切除は腎臓の機能温存を見込めます。

局所療法

摘出以外で、腫瘍を局所的に破壊する方法です。ラジオ波焼灼術(RFA)や凍結療法などがあり、手術が困難な患者や腫瘍が小さい場合に適応されることがあります。これらの治療は、腫瘍を局所的に破壊する方法です。

薬物治療

進行性の場合、再発の場合は薬物治療を行うことがあります。

腎細胞がん用いる薬は以下の種類があります。複数の薬を併用する場合もあります。

分子標的薬(チロシンキナーゼ阻害薬(TKI))

腫瘍の血管新生を抑制することで腫瘍の成長を抑える薬剤です。

mTOR阻害薬

腫瘍細胞の増殖を抑制する薬剤です。

 免疫チェックポイント阻害薬(免疫療法)

免疫系を活性化し、腫瘍細胞を攻撃します。