前立腺肥大症

前立腺肥大症とは?

前立腺肥大症(Benign Prostatic Hyperplasia:BPH)は、中高年の男性に多くみられる良性の疾患です。前立腺が加齢とともに大きくなり、尿道を圧迫することで、さまざまな排尿トラブルを引き起こします。

前立腺は膀胱のすぐ下にある臓器で、尿道を取り囲むように位置しています。そのため、前立腺が肥大すると尿の通り道が狭くなり、排尿に関する症状(下部尿路症状)が出現します。

50歳代では約40%、60歳代では約60%、80歳以上では80%以上に前立腺の肥大がみられるとされており、非常に一般的な病気です。ただし、実際に症状が出る方はその一部に限られます。

前立腺肥大症の原因

前立腺肥大症の発症には、主に加齢と男性ホルモンが関与しているといわれています。

加齢に伴い、前立腺の内側(移行領域)で腺や間質の細胞が増えることで前立腺が大きくなります。また、テストステロンがジヒドロテストステロン(DHT)に変換されることが、前立腺の増殖に重要な役割を果たしています。

さらに、前立腺や膀胱の筋肉の緊張(α1受容体の働き)も関係しており、これらが組み合わさることで尿の通りが悪くなります。

前立腺肥大症の主な症状

前立腺肥大症では、「尿が出にくい症状」と「トイレが近い症状」の両方がみられます。

排尿症状(尿が出にくい)

  • 尿の出始めに時間がかかる(排尿開始遅延)
  • 尿の勢いが弱い(尿線細小化)
  • お腹に力を入れないと出ない(腹圧排尿)
  • 尿が残っている感じがする(残尿感)

蓄尿症状(トイレが近い)

  • 頻尿(昼間・夜間ともに)
  • 急に我慢できない尿意(尿意切迫感)
  • 間に合わず漏れてしまう(切迫性尿失禁)

排尿後症状

  • 排尿後に尿が少し漏れる(排尿後滴下)

これらの症状は徐々に進行することが多く、「年齢のせい」と思って放置されがちですが、生活の質(QOL)に大きく影響します。

前立腺肥大症の検査

前立腺肥大症の診断は、症状の評価といくつかの検査を組み合わせて行います。

問診・症状評価

IPSS(国際前立腺症状スコア)という質問票を用いて、症状の程度や生活への影響を評価します。

下記の質問表で高い点数が出た方は一度ご相談にご来院ください。
(0~8点:軽症、9~19点:中程度、20点~:重症とされています)

全くなし1/5回未満1/2回未満1/2回1/2回以上ほぼ毎回
最近1ヶ月間、排尿後に尿が残っている感じがありますか。0点1点2点3点4点5点
最近1ヶ月間、排尿後2時間以内にもう一度行かねばならないことがありましたか。0点1点2点3点4点5点
最近1ヶ月間、排尿途中に尿が途切れることがありますか。0点1点2点3点4点5点
最近1ヶ月間、排尿をがまんするのがつらいことがありましたか。0点1点2点3点4点5点
最近1ヶ月間、尿の勢いが弱いことがありましたか。0点1点2点3点4点5点
最近1ヶ月間、排尿開始時にいきむ必要がありましたか。0点1点2点3点4点5点
最近1ヶ月間、床に就いてから朝起きるまでに普通何回排尿に起きましたか。(0回)0点(1回)1点(2回)2点(3回)3点(4回)4点(5回)5点

尿検査

血尿や感染がないかを確認します。

血液検査(PSA)

前立腺癌との鑑別のために重要な検査です。

超音波検査(エコー)

前立腺の大きさや、排尿後の残尿量を評価します。

尿流測定検査

尿の勢いやスムーズさ(最大尿流率)を測定します。

前立腺肥大症の治療

症状の程度や生活への影響に応じて、治療方針を決定します。

経過観察

症状が軽い場合(IPSSが低く、生活への影響が少ない場合)は、定期的なフォローで経過を見ることがあります。

薬物療法

前立腺肥大症の治療の中心となる方法です。

α1遮断薬

前立腺や膀胱の筋肉を緩め、比較的速やかに尿の出を改善します。

5α還元酵素阻害薬

男性ホルモンの作用を抑え、前立腺を徐々に小さくします。進行抑制効果があります。

PDE5阻害薬

骨盤の血流を改善させ、排尿症状を改善します。

抗コリン薬・β3作動薬

頻尿や尿意切迫感などの蓄尿症状に対して使用します。

手術療法

薬で十分な効果が得られない場合や、合併症がある場合に検討されます。

例えば、以下のような場合は手術が必要になることがあります。

  • 尿が出なくなる(尿閉)
  • 尿路感染を繰り返す
  • 膀胱結石ができる
  • 腎機能に影響が出る

経尿道的前立腺切除術(TURP)

経尿道的レーザー前立腺核出術(HoLEP)

その他低侵襲手術も検討される場合があります。

例. 前立腺水蒸気治療(REZUM system)、経尿道的前立腺つり上げ術 など

まとめ

前立腺肥大症は加齢とともに多くの男性にみられる病気ですが、適切な診断と治療により症状の改善が期待できます。

前立腺肥大症が進行すると、急性尿閉や腎機能障害などの合併症を引き起こすことがあります。

「トイレが近い」「尿の勢いが弱い」などの症状がある場合は、年齢のせいと我慢せず、お気軽にご相談ください。